〜萌須田社・社員旅行 新居浜編その1〜








   ◆金曜日、20:03、新居浜市内の萌須田社の寮

   「どうしよう……。」

   ココは困っていた。たるぼが、バス、ホテル、観光施設、その他諸々の予約を忘れていたのだ。明日の早朝、

   新居浜駅前に集合することになっているのに、今からではとても間に合わない。ちなみに、たるぼは小豆島に

   ある研究所で、メンテナンス中である。

   「そうだ!お兄ちゃんに相談しよう!」




   ★20:04、萌須田社愛媛支社新居浜研究所第一研究室

   「ウイルスですか……。」

   セイミは、社長からの緊急連絡を受けていた。

   『そうだ。国内の複数の都市……札幌、仙台、東京、横浜、金沢、名古屋、京都、大阪、神戸、高松、

   広島、福岡、那覇の、わが社の施設のコンピュータシステムに何者かが侵入して、ウイルスに感染させて

   いったようなのだ。ほとんどの施設ではウイルスの駆除が完了したか、している途中だが、高松営業所及び

   金沢営業所と連絡が取れない。ウ゛ェッタとルカが高松に向かったが、防御システムが作動していて営業所の

   中に入れないらしい。君も、事態の収拾に必要な人員と機材を伴って、そちらに向かってくれ。』

   「了解しました。それではただ今より、必要な人員と機材を伴い、高松営業所に向かいます☆」

   『それと、このウイルスは、システムに接続したロボットにも感染して、誤作動を起こさせ、場合によっては

   暴走させるようなので、気をつけるように。』




   ★20:14、新居浜市内のコンビニの前

   「あっ、アイリスさん、さくらさん、ユズさん、……と、そのマスターさん、ちょうどいい所にいた☆。

   手伝ってほしい事があるのですが……。」

   「なんでしょうか、セイミさん。」

   セイミは、社長からの連絡の内容を話し、一緒に来てほしいと伝えた。

   「ちょっと待て、RUNAと愛羅と守璃は大丈夫なのか!、あいつら香川支社へ行ったはずたぞ!」

   「RUNAさんと守璃さんは無事です。先程ウ゛ェッタさんに連絡をとって確認したところ、二人とも坂出の工場に

   配属されているそうですから、今回の高松営業所の件とは無関係です☆。それと愛羅さんですが、先程

   仙台市郊外で身柄が確保されたそうです☆」

   「仙台?どういう事でしょうか?」と、アイリス。

   「愛羅さんは高松営業所の仕事で東北地方へ荷物を運んでいたらしいのですが、ウイルスに感染している

   可能性が高かったので、東北萌須田に連絡して捕まえてもらいました☆。青森県むつ市から四国へ戻る途中、

   仙台市に入った所で捕まえたようです☆。現在、仙台北営業所でウイルス除去中。月曜日の夜にはこちらに

   戻って来られるそうです☆」

   「じゃあ、愛羅は大丈夫なんですね。」

   「はい☆。それでは皆さん来てくれますね☆」

   「ちょっと待って下さい。まだ中で音夢が買い物してるんで、伝えてきます。……音夢は行かなくてもいい

   ですよね?」

   「はい、音夢さんは、お留守番で結構です☆。あっ麻綺さん、ちょうどいい所に……。」




   ◆20:21、寮の玄関

   「お兄ちゃんおかえり……って、あれ?音夢ちゃん、お兄ちゃんは?」

   「セイミさんに連れて行かれた。アイリスさん、さくらさん、ユズさんも一緒。たぶん朝まで帰って来ない。」

   「そんなぁ〜、どうしよう……。」

   「何かあったの?」

   「実はね……。」

   と、事情を音夢に説明するココ。話を聞き終えた音夢は、

   「こうすればいい……。」

   と、ココにアイデアの説明を始めた。




   ★23:55、萌須田社香川支社高松営業所前

   「ウ゛ェッタさん、手伝いにきたよ☆」

   必要そうな機材を持って、セイミ達(セイミ、麻綺、アイリス&さくら&ユズ&そのマスター)が到着した。

   現場ではウ゛ェッタとルカの他、ウ゛ェッタによって呼び出された守璃とアウ"ァターラが建物の中への侵入を

   試みていた。

   「助かります。それで、今の状況ですが、まだ中へ入る事には成功していません。建物の表面にバリアが

   張られていて、物理的な攻撃も霊的な攻撃も全く受け付けないのです。しかも攻撃を行うとレーザーで

   撃たれます。」

   「レーザーを撃って来た瞬間に、こちらも撃ち返すのはどう?私達もレーザー銃持って来ていますよ☆」

   「それも試しました。ですが中から外へのレーザーは通すけれど、外から中へは通さないバリアなのです。」

   「そう。それでは核を使って……☆」

   「なにをおっしゃるのです!高松市を消滅させる気ですか!!だいたいあなたは……。」

   この後、セイミに対するウ゛ェッタの説教が、長々と続いた。




   ★土曜日、00:59、萌須田社香川支社高松営業所前

   「皆さん、中に入れました。」

   セイミの説教と、その他数名による建物内侵入の試みは、ユズの一言で中断された。

   「本当か、ユズ!」

   「どうやって入ったのですか!?」

   みんな口々に尋ねる。

   「穴を掘って、地下から侵入してみたんです。地下にはバリアはありませんでした。」

   「…………。」

   「と、とにかく中へ入りましょう。」

   「みんな、絶対に営業所のコンピュータシステムと接続しないでね☆」




   ▼01:13、坂出の港にある工場の周り

   RUNAは一人で見回りをしていた。

   いつもはアウ"ァターラさんと二人で見回りをしているのだが、彼女がウ゛ェッタさんに呼び出されたので、

   今日は一人である。

   しかしRUNAは寂しくなかった。ここには大勢の霊達が居るのだ。

   車に乗ったまま海に落ちて亡くなった人達や、殺されて、この近くに棄てられたお婆さんと子供

   (その話を聞いたとき、RUNAは、かわいそうで悲しい気持になった)、他にもいろいろな霊達が……。

   アウ"ァターラさんのおかげで、何人かの霊とは親しくなれた。今も時々、親しい霊が話しかけてくれる。




   ★01:31、高松営業所2階

   「誰も出て来ませんね☆」建物へ侵入した後、ウ゛ェッタ、セイミ、以下数名はしばらく誰とも出会わなかった。

   しかし……、

   「皆さん静かに!」

   「どうした、ユズ。」

   「かすかに声が聞こえます。……あっちみたいです。ついて来て下さい。」




   ★01:35、高松営業所3階

   「眼鏡っ娘、ハァハァ。」「や、やめてください……。」

   ユズに連れられて声のする方へ行くと、そこでは、お姉さまタイプの女性が、おとなしそうな眼鏡っ娘を

   襲っていた。

   すかさず、アイリスが、襲っている方の女性を刀で攻撃して沈黙させ、眼鏡っ娘を助け出した。眼鏡っ娘は

   アイリスの胸に顔を埋め、泣きはじめた。

   「お、おいアイリス……。」

   「気絶させただけです。……確か社員旅行参加者の、遊乃さんですよね、その方。」

   「はい、そしてアイリスさんの胸で泣いている人は、この春入社したばかりの新人で、建物内に残っている、

   おそらく唯一の人間だと思われます。……この営業所の、ほとんどの方は先月から坂出の工場へ、

   応援に行かれているので。後は営業所所属のロボットが数名居るだけのはずです。」

   「それじゃ、遊乃さんのウイルス除去は私とウ゛ェッタさんでするから、みんなは先に行って☆」




   ★01:56、高松営業所最上階

   「愛羅と〜、ナンパ男が〜、戻って来たら〜、この荷物を〜、リスボンと〜、ジョホールバールと〜、

   マガダンと〜、アデンと〜、トロンヘイムと〜、トリウ゛ァンドラムに〜、持って行って〜、もらいましょう〜。

   くすくすくす。福岡から〜、プサンまで〜、トラックを〜、船で運んだら〜、いくらかかるかしら〜。くすくすくす。」

   「敵だ敵だ敵だ〜!営業所所属者リストに名前がないやつはみんな敵だ〜!通信は全て拒否だ〜!」

   ………………。

   ドカ! バキッ! ゴキュ!

   「マスター、この後どうしますか?」

   「とりあえずセイミさんとウ゛ェッタさんの所まで戻ろう。……さくら、こいつらを運んでくれ。」

   「はい、だんな様。」




   ★02:32、高松営業所3階

   「それじゃあ、私とウ゛ェッタさんでウイルスを除去するから、アイリスさん、さくらさん、ユズさん、守璃さんと

   そのマスターさん、麻綺さん、ルカさん、アウ"ァターラさん、眼鏡の新入社員さんは後片付けを

   お願いしますね☆。」




   ★02:48高松営業所の廊下

   「あ、あの、……アイリスさん、ですよね。」

   最上階の部屋の掃除を終えて戻る途中のアイリスは、眼鏡の新入社員(女)に呼び止められた。

   「はい。何か、御用でしょうか?」

   「あ、あの、わ、わた、私……、貴方が好きになりました!! 付き合って下さい!!」

   そして眼鏡の新入社員は、アイリスの胸の中へ……。

   ……マスター、こういう時はどうしたら良いのでしょう?……




   ★03:27、高松営業所3階

   「セイミさん、確か今日の午前6時頃に新居浜駅前に集合でしたよね。そろそろ戻らないと、

   間に合わなくなりますよ。」

   「そうね☆。でもまだ遊乃さんだけしかウイルス除去出来てないですよ。残りはどうするの?」

   「後で小豆島の研究所にやってもらえるように頼んでみます。駄目なら月曜日に来てやりましょう。」

   「それじゃ、みんなを呼んで来るから、ウ゛ェッタさんは遊乃さんを起こしたら外に出て待っていて☆」




   ▲04:50、仙台北営業所前

   愛羅と、仙台北営業所の那津海という娘が何やら話している。

   「あの、本当にいいんですか?」

   「いいわよ。いろいろとお世話になったし、土浦も静岡も浜松も帰る途中に立ち寄れるし、荷物を届ける

   くらい問題無いわよ。」

   「ハイッ!それじゃ、頼みます!」

   「ところで、私と一緒に男の人が乗っていたはずだけれど、見掛けなかった?」「あの男性型ロボットですね!

    診断装置にかけてみたらウイルスに感染していないという結果でしたし、エネルギー節約モードになっていた

   ので、カプセルに入れて、香川支社の研究所に送っておきました!」

   「えーっと……、あの人、人間だけど……」




   ★04:55、香川県観音寺市付近を走行中の車の中

   Zzz……。すやすや……。

   眼鏡の新入社員を家まで送った後(別れ際に、新入社員(女)がアイリスに抱きついたが、まあ、あまり深く

   考えないようにしよう)、ユズをいぢめて遊ぼうとした遊乃を問答無用で緊急停止させ、集合場所である

   新居浜駅前を目指して、セイミは運転している。

   運転手であるセイミ以外、皆寝てしまった。さすがに疲れたのだろう。

   セイミも疲れているのだが、さすがに運転中に寝るのはマズイので、早く研究所に戻って寝たいと思っている。

   それと、集合時間に果たして間に合うのだろうかとも。







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