〜バトル・オブ・モエスタ「序章」〜





   「今回の仕事は、絶対に断ることができんのだ」

   至ってシリアスな調子で、社長は言った。

   「わが萌須田社の総力を挙げて勤めあげねばならん」

   「わかりました」俺も神妙にうなずいた。社長がそこまで言うのに、嫌とは言えない。いや、言いたくない。

   「おお、わかってくれるか。すまん」

   「それで、何をすればいいんですか?」

   「なに、難しいことではない」

   社長はそう言ってモニタのスイッチを入れた。

    本社の倉庫の中に鎮座する、巨大な大型トレーラー・トラックが映し出される。40トンは積めそうだ。

   「このトラックを北海道の岩見沢まで運んでほしいのだ」

   「……コンテナの中は核爆弾とか言うんじゃないでしょうね」

   「核ば……そんな物騒なものじゃない」

   『核爆弾』の部分におかしな反応をしたが、社長はあっさり否定した。

   「だが、このトラックの荷物を狙っている輩がいるのは事実だ。

    ……その目的も、正体も、規模も今のところわからんのだが」

   「……社長、何を隠してるんですか?」

   「(ドキイッ!) ……な、何も隠してなどおらんよ」

   空笑いする社長。相変わらす嘘をつくのが上手くない人だ。

   「……でも、かなり分が悪いですね。

    察するに、敵はおそらく相当な規模なのでしょう?

    トラックの運転は愛羅に頼むとしても、戦闘系の性能を持っているのはアイリスと守璃だけです。

    ……ああ、CATモードを装備すればココだって……」

    「……あれ? 何の話でしたっけ?」

    「戦闘系の性能があるのはアイリスと守璃だけ、という話だ」

    社長はにやりと笑った。

    「心配いらん。わが社の総力と言っただろう? 全国の支社にも号令を発しておいた。

    東北支社仙台北営業所の那津海くんに静岡支社西部営業所のミキくん、ラグナくんの3人が君の指揮下に入る」

     ……なんだかスケールの大きな話になってきた。

    「……最後にひとつだけ聞かせてもらえますか」

    「なにかな」

    「この仕事の依頼主は誰ですか?」

    社長は再び笑った。

    「日乃本財閥だ」







    「ラグナさんは現在、マスターから一切の戦闘行為を禁じられています。

    従って、基本的なスペックは明らかにされていますが、実戦時の能力を示すデータは一切ありません。

    ミキさんに至ってはデータ自体が存在していません。秘密作戦に従事することが多いためでしょう」

    「この二人の能力がはっきりしなければ、作戦の立てようがない、ということか……」

    「はい」

    「なら、実際に戦ってみたらどうかな?」

    「静岡支社の西部営業所と話はついた。ミキさんとラグナさんのマスター、コッペルさんとリフレックスさんの

     了解も得られたよ」

    「ありがとうございます」

    「アイリスはラグナさん、守璃はミキさんとでいいかな」

    「結構です」

    「それで、どういう方法で戦うんですか?」

    「不意打ちです。いきなりこの二人に仕掛けます」

    「……えっ?」

    「真面目な話です。知りたいのは非常時の対応力ですから」

    「……わかった。すべてアイリスに任せるよ」

    「でも……だまし討ちみたいであんまり気が進みませんね……」








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