〜バトル・オブ・モエスタA〜





   「本社からの号令というからには、こちらには拒む権利はない、ということですよね」

   「こちらの都合でごり押しして申し訳ないのですが……そういうことになります。本社だけでは

    手が足りませんから」

   「いえ、社長命令に物言いをするつもりはありません。

    守璃さんとミキを戦わせるという話のほうです」

   「まさか破壊しようというんじゃありません。先ほどご説明したように、ただデータを取りたいだけですから」

   「データ取りだけですめばいいんですけどね……」

   「は?」

   「ミキは、引き金を引くのをためらいませんよ」




   「ふう、風が気持ちいい……」

    夜の港。ミキは風を浴びながら海を見ていた。

   「今年の夏は忙しくて海に行けなかったな……」

    ミキの目が鋭くなる。

   「マスターは日焼けに弱いから、あまり海にお連れするわけにもいかないし」

    右手をゆっくりと背中にまわす。

   「いつも厚着だからこの間、お友達に『この暑いのによくそんな格好してるな』って言われてたっけ」

    セーラー服の下からソウドオフしたダブルバレル・ショットガンを引き抜き、目にも留まらぬ速さで振り返る。

    外灯の上に立っていた人影へ向けて発射した。

    人影が飛ぶ。外灯が10番ゲージの散弾の直撃を受けて爆砕した。

    (外した!?)

    人影が地面に飛び降りながら撃ってくる。ミキは横に飛んだ。殺到する弾がアスファルトの地面をかきむしる。

    (オートマティックの二挺拳銃……45口径か)

    ミキは敵の武器を分析し、ショットガンで応射した。散弾がアスファルトを吹き飛ばす。

    (また当たらない……!)

    ミキは銃身を折り、ショットシェルを入れ換えながら相手の銃撃から逃げた。



    (なんて精確な射撃……!)

    エイダ&バベッジを撃ちまくりながら、守璃は戦慄を禁じえなかった。

    これまで回避できたのは、自分がロボットだからこそだ。到底人間の瞬発力で逃げられるレベルではない。

    近づかせてはいけない。ただでさえ近距離での破壊力が絶大なショットガンは、ソウドオフすることで

    更に至近距離での威力が増す。

    逆に言うと、ミキは接近戦をもっとも得意とするということだ。実際、ミキは少しずつこちらとの距離を

    縮めてきている。

    「くぅ!」

    守璃はエイダ&バベッジを乱射した。ミキは手近の乗用車のドアを片手一本でたやすくこじ開け、盾にする。

    地面に背をつけ、穴だらけになったドアの下からショットガンを発射した。

    守璃の横に止まっていた車の給油口が弾け飛び、ガソリンが漏れ始めた。

    「あ!」

    守璃が地を蹴る。ミキが立ち上がってショットガンを撃つ。車は紅蓮の炎を吹き上げて爆発した。

    強烈な熱に炙られ、守璃の身体が地面を転がる。新しいショットシェルを装填して銃身を戻す。

    立ち上がろうとした守璃に向かってミキは更にショットガンを発射した。散弾が守璃の覆面をぶっちぎり、

    顔があらわになる。

    「あうっ!」

    ミキが風のように飛び込んでくる。

    銃を構えた腕と腕が交差し、互いに相手に銃を突きつけあった。守璃はミキの眉間に、ミキは守璃の喉に。

    「……やはり、あなたでしたか」

    「ばれちゃいましたね。そのとおり、私は本社所属の守璃です。

     ……でも、随分前から気づいていたのでしょう?」

    「ええ。私が故障しているのでない限り、私の射撃をかわせる人間はいませんから」

     二人は銃を下げた。

    「さすがは特捜ロボットですね。私よりはるかに実戦経験を積まれて……とっても強かったです」

    「いえ、私の射撃をこんなにかわしたのは、あなたが初めてですよ」




   「それにしても……。ミキさん、本当に強かったです……。

    何とか引き分けに持っていけましたけど、今度戦ったら、負けるかもしれません……」

   「……ふふっ」

   「? どうしたですかマスター。笑ったりして」

   「いや……すまん。あの後、ミキさんのマスターのコッペルさんから聞いたんだが、ミキさんも守璃と

    同じことを言っていたそうだよ。

   『守璃さんは、私の性能を遥かに上回っています。

    今度戦えば、私では勝てないかもしれません』

    ……って」

   「いえ、マスター、そんな……」

   「それはそうとアイリス、ラグナさんはどうだった?」

   「非常に高い精神性と、それに見合うだけの力をお持ちです」

   「……確かに、あの状況で剣を抜かないのは、いくらマスターの意向があったとはいえ、

    なかなかできることじゃないな」

   「それで、かえって私は命拾いしたのかもしれません」

   「命拾い、ですか?」

   「今回、ラグナさんは剣を抜きませんでした。そのために不確定要素が多すぎて断言はできませんが……。

    もしラグナさんがその気になったなら、私は倒されていたかもしれません」




   「そういえばマスター、どうして那津海さんとは戦わないのですか?」

   「那津海さんについては、マスターの樹あずみさんから、詳細なデータの提出を受けているからね。

    那津海さんに限らず、すべての支社のロボットも皆きちんとスペックはデータ化されてうちの

    コンピュータに入ってる。

    ミキさんとラグナさんだけが、データがなかったんだ。二人とも特殊な事情を抱えているからね」




    「ふふっ……思ったとおりですわね。

    『那津海』・『ミキ』・『ラグナ』……。

    やはり、萌須田社にはあの二人の他にも戦闘系ロボットがいましたわ。

    それも3人も」

    「タマ、とっても嬉しそうネ」

    「ええ、嬉しいですわ。とても。

    作戦第一段階はこれにて終了!

    第二段階へ移行しなさい!」





【戻る】



inserted by FC2 system